歯の構造は図のようになっています。エナメル質は水晶と同じ硬さで人間の体の中で最も硬度の高い組織です。その内側に象牙質、さらにその内側に歯髄(神経)があります。歯根(歯の根)は歯槽骨と呼ばれる骨に支えられており、歯槽骨の上を歯肉(歯ぐき)が覆っています。歯槽骨に埋まっている歯根部分にはエナメル質はなく、セメント質と呼ばれる組織が存在します。セメント質と歯槽骨は歯根膜によって結合しています。むし歯や歯周病はこれらの組織が細菌によって破壊され引き起こされる疾患です。吹上みなみ歯科では、健康な歯と歯周組織のしくみを患者さんにも知っていただき、ご自宅でのケア重要性の理解を深めていただくよう努めています。
むし歯とは、口腔内細菌(主にミュータンス菌)が、食べ物などの糖分を餌にして酸を作り出し、それによって歯の中の成分(カルシウムやリン酸)が溶け出る状態のことを指します。むし歯のなりやすさには「歯の質」・「時間」・「糖分」・「細菌」の4要素が関わっています。
歯の質は遺伝的要素が強いですが、歯の質を強くする方法として、「フッ素塗布」があります。エナメル質のほとんどは「ハイドロキシアパタイト【Ca10(PO4)6(OH)2】」というでできています。「フッ素【NaF】」を取り込むとハイドロキシアパタイトは「フルオロアパタイト【Ca10(PO4)6F2】」に変化し酸に強くなります。そのため、むし歯のリスクが高い方などには高濃度フッ素入りの歯磨き粉などをお勧めします。
通常、口腔内は唾液の作用などで中性を保っています。ところが、飲食後そのままの状態にしておくと、食事などに含まれる糖を口腔内細菌(主にミュータンス菌)が取り込み、酸を産出します。こうして、口腔内は酸性に傾き、歯の中の成分(カルシウムやリン酸)が溶け出る原因となります。この現象を脱灰(だっかい)といいます。微量の脱灰であれば、歯磨きなどの口腔ケアなどで唾液の中に含まれるカルシウムやリン酸を再度取り込む再石灰化(さいせっかいか)という作用が期待できます。一方で、食事の時間が定まらず、ダラダラ食べ続けると、口腔内が中性に戻るチャンスが少なくなり、エナメル質の成分が溶出し続け、治療が必要なむし歯へと進行するきっかけを作ります。
「糖」と聞くと、お菓子やジュースなど甘いものだけを想像しがちですが、ほとんどすべての飲食物には糖が含まれます。細菌たちは糖を摂取して酸を産生しますので、その原因を断つために毎日の歯磨きをはじめとする口腔ケアがとても重要です。
口腔内には無数の細菌が生息しています。その中にはむし歯の原因菌であるミュータンス菌、歯周病細菌なども含まれます。悪さをしない菌もいますが、むし歯菌、歯周病細菌が増えると、歯の表面の成分を足倍にバイオフィルム(細菌叢)を形成します。これがプラークと言われるクリーム色のモサモサとした汚れです。プラークは柔らかいため、歯ブラシなどのセルフケア用品で除去できますが、1~2日で徐々に石灰化し固くなると歯ブラシなどでは取れなくなります。これが歯石です。歯石を残したまま一生懸命歯ブラシをしてもむし歯のリスクは高いままですから、早めに除去し、新しい歯石を作らないためのセルフケアの見直しが必要となります。
むし歯治療は進行段階により治療法が異なります。C2までの段階は、即日~2、3回の来院回数で治療が終了しますが、C3以降の段階になると歯髄(歯の根)の処置が必要となり、来院回数も大幅に増え、状況が悪い場合は歯内療法専門医へのご紹介(自由診療となります)や抜歯をお勧めする場合もあります。(※C1は歯の「再石灰化」の効果を期待し、フッ素塗布などで経過観察する場合もあります)被せ物の種類は保険、自費どちらにも対応しておりますが、保険の被せ物(銀歯)は細菌の集合体であるプラークが付着しやすい素材ですので、残った歯の健康を考えるとプラークの付着がほとんどないセラミック素材をお勧めします。
虫歯によって、表面のエナメル質が溶け出します。まだ痛みはそれほど感じません。
虫歯が象牙質に到達します。冷たいものが染みるようになってきます。
歯の神経(歯髄)部分まで虫歯が到達します。ズキズキとした痛みがあります。
歯の根の部分だけになり、周囲に膿が溜まります。神経(歯髄)が死んで痛みが治ります。